発表2:「森蘊が見た寝殿造系庭園とは」

名前:麻生美波(M2)呉欣穎(M2)小川千尋(B4)稲井佳那子(B4)
概要:
森蘊は日本庭園の測量と復元を行なった研究者、また自ら庭を手掛けた作庭家としても知られている。私たちは測量・研究と作庭の関係性を探るという観点からより深く森蘊の作庭した龍蔵院庭園について考察することを試みた。また森は寝殿造系庭園(森の造語で平安時代の寝殿造庭園の流れを汲むものという意味で使用されている。)を好んでおり、その手法が龍蔵院庭園にも散りばめられているため、特に寝殿造系庭園との関係性について考察することとした。

まず森蘊が測量・復元を行なった庭園として円成寺庭園を見学し、その他に森が測量・復元等に関わった寝殿造系庭園である法金剛院庭園、浄瑠璃寺庭園、旧大乗院庭園、東三条殿庭園の4つの庭園を文献等から調査することで、庭の配置や池の形状、用途など森蘊が円成寺庭園などから明らかにした寝殿造系庭園における特徴を再確認した。

また円成寺庭園においては、復元と寝殿造系庭園の関係性について調べるため、「名勝円成寺庭園-環境整備事業報告書」の調査や当時の整備計画図と完成図の比較を行った。整備当時は金銭的な制限もあり出来るだけ古い時代の姿に復元するという当初の計画から大幅に変更されている部分がいくつか存在することがわかった。特に橋や護岸形状に係る変更が大きく、この部分には森の作意が強く反映されていると考えられる。

さらに龍蔵院庭園に見られる寝殿造系庭園の特徴についても考察を行なった。龍蔵院庭園は文献調査を行った庭園と比較すると小さいものの、寝殿造系庭園における5つの特徴を有していることがわかった。ここから龍蔵院庭園の作庭では寝殿造系庭園を強く意識していたことが窺える。一方で、周辺の自然環境の捉え方や象徴的な視点場を作らず1つの庭として一体的なデザインをしていることから庭全体は自身の研究を踏まえ寝殿造系庭園の構成をとっているものの、庭の意匠的の特徴については森独自のデザインや理念が反映されていると言えるかも知れない。今回のリサーチにおいて測量や復元などの調査活動が作庭に影響を与えていることがわかった。事例調査では一部の庭園を対象としたが、森が測量と復元に関与した庭園を詳細に見ていくことで、関心を持っていた部分を知ることができるかもしれない。


前のページに戻る