「小学校三年生のとき、当時早慶明法の東京四大学野球戦を見に行った。先代大錦、栃木山の活躍中の大相撲にも興味を覚えた。どんなスポーツも面白いと思ったが、それ以上にどの道にもすばらしい人が居て、その人たちが自分の能力の限りを尽くして頑張っている姿を美しいと思ったものである。
私は若い頃スポーツに夢中であったのに比し、学問の方は好きな科目だけしか熱心でなかったので、いつも成績は低空飛行に近かった。そんなことがもとで、この年になっても決して世間的に出世はしていないが、卒業論文にまとめた古庭園の復元の問題だけには、五十年間執念を燃やしつづけ、漸くこの方面が日の目を見たことだけは鼻が高い。人間というものは他人に迷惑をかけさえしなければ、どんな学問でも、どんなスポーツでも、どんな仕事でも、おのれの信ずるところをとことんまで究めるのがよい。
これが私の、せいいっぱい生きる精神である。」
「せいいっぱい生きよう」『青少年の座右銘 続・私の座右銘東京人』育英出版社 1979
左写真:橋本聖圓提供